漫画みたいなスゴイ奴:グスタフ・アドルフ【英雄編】
前回はローマ最大の英雄:ガイウス・ユリウス・カエサルをご紹介。
今回はスウェーデンの獅子王です。
第一回テーマと人物たち
アレクサンドロス3世(古代マケドニア)
ハンニバル・バルカ(古代カルタゴ)
ガイウス・ユリウス・カエサル(古代ローマ)
グスタフ・アドルフ(17世紀スウェーデン)
テュレンヌ元帥(17世紀フランス)
サヴォワ公オイゲン(18世紀オーストリア)
フリードリヒ2世(18世紀プロシア)
あの半端ないナポレオンが認めた人類史に輝く英雄七人。
漫画のキャラクターのような英雄を第一回目のテーマとして扱います。
第四回目の人物は…
スウェーデン近代化の父:グスタフ・アドルフ
スウェーデンを商業的にも軍事的にも発展させた英雄。
「北方の獅子王」の異名を持つ三十年戦争の主要人物のひとりです。
グスタフ・アドルフ概要
北方の一国に過ぎなかったスウェーデンの存在感をヨーロッパ中に広めた人物。
商業・軍事・教育など幅広く国家の近代化に尽力した名君。
三行でわかるグスタフ・アドルフ
- ラノベを地で行く男
- 三度の戦いで英雄になった男
- 男たちのスウェーデン
ラノベを地で行く男
スウェーデンの近代化に成功した名君であるグスタフ・アドルフ。
そんな彼にはまるでラノベの主人公のようなエピソードが盛りだくさんです。
ハイ・スペックな才能
ラテン語・ドイツ語・オランダ語・フランス語・イタリア語を母国語のように話し、スペイン語・英語・スコットランド語・ポーランド語・ロシア語を理解していたそうです。
9歳で早くも公務に就き、17歳の若さでスウェーデン王になります。
自国の近代化(教育・商業・軍事など)も成功させ、政治家としても軍人としても一流の才能を持っていた人物と言えます。
非常に才能豊かな人物だったとされ、特に「三兵戦術の実践」や「傭兵政策」などの軍事政策はスウェーデンの強国としての地位を築きあげるものでした。
http://ja.wikipedia.org/wiki/三兵戦術
17歳の王・28歳の宰相
グスタフ・アドルフが王になったのは、17歳の時。
父親の死による即位でした。
そして宰相として任命したのは当時28歳という若きアクセル・オクセンシェルナでした。
スウェーデンは17歳の王・28歳の宰相によって強国となっていきます。
なんというライトノベル的展開!!
この2人は非常に息のあったコンビで知られ、それを象徴するエピソードが残っています。
グ=グスタフ・アドルフ
ア=アクセル・オクセンシェルナ
グ「皆おまえのように冷静であったら世界は凍り付いてしまうな」
ア「人が皆、陛下のように短気であれば、世界が燃え尽きてしまいますよ」
血気盛んで軍事的な才覚に溢れたグスタフを慎重なアクセルがカバーする。
性格が真逆故に二人は共に才能を発揮し合える名コンビとなった訳です。
アクセル・オクセンシェルナは名宰相として知られ、グスタフ・アドルフと共にスウェーデンの近代化に尽力した人物として知られています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/アクセル・オクセンシェルナ
嫁が半端ないヤンデレ
マリア・エレオノーラ・フォン・ブランデンブルクが嫁さんです。
当時「ヨーロッパで最も美しい王妃」と謳われる美貌を持った人物です。
しかし、重度の極度のヤンデレ。
- 生まれたのが娘だったので殺そうとする
- 死んだグスタフの心臓を手元に置き続ける
- 遺体を取り戻そうと、埋葬場所を探し出し破壊するなど
結構マジモンの「ヤンデレ」です。
しかし、他国から嫁いだ彼女にとってグスタフは精神的支柱でした。
また、度重なる流産などが結果的に精神的依存度を高めたと言われています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/マリア・エレオノーラ・フォン・ブランデンブルク
三度の戦いで英雄になった男
かの英雄ナポレオン・ボナパルト曰く
偉大なるグスタフ・アドルフを見よ!
18ヶ月のうちに、彼は最初の戦いに勝利し、2度目に敗北、
そして3度目に命を落とした。
彼はなんと安価に名声を手に入れただろう!
実際にはポーランドなどとの戦闘もあり当然、生涯の戦闘数は3回ではありません。
しかし、スウェーデンの名と北方の獅子王の名を広めた戦いは「※三十年戦争中に行われた3度の戦い」と言っても問題ないと思われます。
※三十年戦争
最後の宗教戦争・最初の国際戦争などと形容される戦争。
グダグダ感、わけわからん長さ、などなど非常に「欧州的」戦争。
表向きはカトリックVSプロテスタントですが、中身は欧州独特のドロドロな内容。
ヨーロッパ史においては非常に重要な戦争です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/三十年戦争
北方の獅子王 VS 甲冑をまとった修道士
グスタフ・アドルフの知名度を向上させた戦いは三十年戦争中に行われた「ブライテンフェルトの戦い」です。
この戦いは「グスタフ・アドルフ率いるスウェーデン軍・ドイツ・プロテスタント諸侯の連合軍」と「ティリー伯率いる神聖ローマ帝国皇帝軍」が交戦したものです。
ティリー伯ヨハン・セルクラエスの異名は「甲冑をまとった修道士」。敬虔なカトリック教徒で非常に強い信仰心で知られていました。
この戦いはスウェーデン側の勝利に終わり、グスタフ・アドルフの名を広めます。
また、この戦いの勝利には複数の意味がありました。
- 三十年戦争におけるプロテスタント側の初めての勝利
- グスタフ・アドルフがプロテスタントの守護者としての名声を得る
- 伝統的テルシオという隊形を軍事改革によって打ち破るなど
三十年戦争におけるスウェーデンの存在感と立ち位置を明確にする戦いでした。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ティリー伯ヨハン・セルクラエス
http://ja.wikipedia.org/wiki/ブライテンフェルトの戦い (1631年)
北方の獅子王 VS ボヘミアの傭兵隊長
ブライテンフェルトの戦いで勢いづいたスウェーデン軍はレヒ川の戦いでティリー伯率いる神聖ローマ帝国皇帝軍を再び打ち破ります。この際にティリー伯は死亡。
そして戦場に一度罷免されていた男が帰ってきます。
それがグスタフ・アドルフ最大の強敵にしてボヘミアの傭兵隊長であるアルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタインです。
「軍税」という概念を用いて当時では信じられない規模の傭兵の維持を実現させた人物です。
複数回ヴァレンシュタインと激突。しかし、決着は着かずに均衡状態になります。スウェーデンにとってこの均衡状態は非常に危険なものでした。
- プロテスタントの守護者としての地位が揺らぐ(政治的ダメージ)
- 敵地のため軍の維持が非常に困難など
この状態を打開するべくスウェーデン軍は強行して戦闘が始まります。
これが決戦である「リュッツェンの戦い」です。
この戦いはスウェーデンが戦いを有利に進めていきます。
しかし、戦場を覆う霧と硝煙、何よりもグスタフが酷い近眼だったために少数の護衛兵とともに敵中に突出してしまいます。
この戦いによってグスタフ・アドルフは死亡。
北方の獅子王は38歳の若さであっけなく死亡しました。
通常では、王などの指令系統が戦死した場合はその時点で部隊が崩れていくケースが多いです。しかし、スウェーデン軍はそれを防ぐことが出来ました。
- 霧と硝煙のため敵味方共にグスタフの死を確認できなかった
- 指揮権の譲渡がスムーズに行われた
- 敵討のために猛烈な勢いで突撃を仕掛けたなど
結果的にスウェーデン軍の勝利でこの戦いは終わります。
しかし、王は死にスウェーデンは手放しにこの勝利を喜ぶわけにはいきませんでした。
http://ja.wikipedia.org/wiki/アルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタイン
http://ja.wikipedia.org/wiki/リュッツェンの戦い (1632年)
それぞれのその後
リュッツェンの戦いは両陣営にとって非常に意味のある戦いでした。
しかもこの戦いの2週間後に三十年戦争におけるプロテスタント側の中心人物であるプファルツ選帝侯フリードリヒ5世がペストの感染によって死亡するなど大きな転機を迎えます。
何よりもアドルフ・グスタフの死はスウェーデンだけではなくプロテスタント側の勢力に打撃を与えました。また意外にもアドルフ・グスタフの死はヴァレンシュタインにとって大きなマイナスでした。
なぜなら、ヴァレンシュタインはアドルフ・グスタフに対抗する勢力として存在していたからです。ヴァレンシュタインは最終的に暗殺されます。
皇帝に危険視されていたことが原因だと思われます。
ネルトリンゲンの戦いでスウェーデンは敗北。三十年戦争における主導権を失います。
しかし、王を失ってもスウェーデンの男たちは何も諦めていませんでした。
男たちのスウェーデン
アドルフ・グスタフはリュッツェンの戦いで戦死しました。
スウェーデンは王無き国家となったわけです。
しかし、彼の意思を受け継いた男たちがスウェーデンのために戦い続けます。
その筆頭が名宰相アクセル・オクセンシェルナです。
軍事同盟であるハイルブロン同盟の結成など様々な成果を挙げ三十年戦争の最終的勝利を演出しました。アドルフ・グスタフとアクセル・オクセンシェルナが共に戦い築き上げた時代は後にバルト帝国時代と呼ばれスウェーデンの最盛期とされています。
スウェーデンの首都ストックホルムのグスタフ・アドルフス広場にはグスタフ・アドルフの銅像とそれを下から仰ぐオクセンシェルナの銅像が立っています。
スウェーデンの近代化のために戦った英雄の姿が今もなお、そこにあり続けています。
まとめ
第四回目漫画みたいなスゴイ奴【英雄編】グスタフ・アドルフはいかがだったでしょうか?
王無き後にも戦い続けた男たちがいた。
優れた王と優れた宰相という理想的な関係が非常に魅力的な人物です。
また、ライバルであるアルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタインの魅力!
同時代に同じ戦場で共に優れた軍人同士が激突をした事実。
まさに歴史のロマンですよね。
AAのいわゆるやる夫で学ぶシリーズ。
非常にわかりやすく、なおかつ面白い! オススメです!!
第五回目はフランスの大元帥であるテュレンヌ元帥。
戦術の芸術家についてまるっと何となく知った気になる紹介を行います!
参考サイト様
- グスタフ2世アドルフ (スウェーデン王) – Wikipedia
- スウェーデン王グスタフ2世アドルフ妃 マリア・エレオノーラ – まりっぺのお気楽読書
- アクセル・グスタフソン・オクセンシェルナ – 路側帯の変態紳士/TEAM痛痛C
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