歴史に輝く無駄にカッコイイ二つ名・異名【オスマントルコ編】
今回で通算五回目となる二つ名・異名ネタ。
今回は個人的に非常に好きな「オスマントルコ編」です!
異名 【イミョウ】
1 本名、本来の名称以外の名。一名。別名。異称。いめい。
2 あだ名。いめい。「大酒飲みで、うわばみの―をとる」
出典:デジタル大辞泉
オスマントルコのカッコイイ二つ名・異名集
支配者:ムラト1世
ムラト1世:オスマン帝国の第3代皇帝
1319年(or 1326年)~1389年6月15日
ビザンツ帝国などキリスト教圏と積極的に戦闘を行った人物。
オスマントルコの国家的な存在感を他のイスラム国家やキリスト教圏に示した。
常備軍であるイェニチェリ確立への貢献や宰相の権限拡大など、後の大帝国への布石を様々なかたちで残したかなり偉大な人物。
異名は支配者以外に「神の代理人」という意味もある「ヒュダヴェンディギャール」で呼ばれていたそうです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ムラト1世
雷帝:バヤズィト1世
バヤズィト1世:オスマン帝国の第4代皇帝
1360年~1403年3月8日(もしくは3月9日)
その迅速な行動と積極的な外征から付けられた異名。
雷帝や稲妻とあだ名されたそうです。
軍事に関して天才的な才能を持ち、ニコポリスの戦いで十字軍に勝利したことで非常に大きな名声を得ています。
また、内政では後に慣例化される「兄弟殺し」を始めたことでも知られています。
※兄弟殺し
後継者争いによって生じる泥沼の闘争よりも、殺人の方が望ましいという解釈。
後に慣例化されていきます。
http://ja.wikipedia.org/wiki/バヤズィト1世
征服者:メフメト2世
メフメト2世:オスマン帝国の第7代皇帝
1432年3月30日~1481年5月3日
コンスタンティノープルを陥落させたことであまりにも有名。
30年以上に渡る外征から「征服者」と呼ばれています。
また、キリスト教圏を恐怖のどん底に落とした人物であり、「破壊者」「キリスト教最大の敵」「血にまみれた君主」と恐れられたそうです。
苛烈で狂信的であったと言われていますが、同時に非常に文学や芸術に理解を示した人物でヨーロッパ文化にも高い関心があったようです。個人的には三国志の曹操や織田信長的なイメージがあります。
実際に、コンスタンティノープルはイスラム教だけではなくキリスト教、ユダヤ教などが混在する非常に国際的な空気が流れる場所だったようです。
また、その外征は征服王の異名で知られるアレクサンドロス3世と比較され、メフメト2世もアレクサンドロス3世の伝記を読むなどお気に入りだったようです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/メフメト2世
冷酷者:セリム1世
セリム1世:オスマン帝国の第9代皇帝
1465年10月10日~1520年9月22日
オスマン帝国の皇帝の中でも屈指の軍事的天才で知られ、その功績は祖父メフメト2世を凌ぐと評価する者がいるほど。
異名の由来は、敵対する者に一切の容赦がなくシーア派の大粛清などが知られています。
ただしヤヴズ(冷酷者)には別に優れた者というニュアンスがあり「卓越者」と訳される場合もあるそうです。
セリム1世のライバルはイスラム教シーア派の国家サファヴィー朝の建国者であるイスマーイール1世です。
イスマーイール1世は美少年で知られており、謁見した西洋人が
「余りに美しく、邪悪なものを感じさせるほどだ」
出典:鈴木 董『オスマン帝国 イスラム世界の「柔らかい専制」』121頁
と感嘆したそうです。
ちなみに、セリム1世とイスマーイール1世は優れた詩人としても知られています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/セリム1世
壮麗帝:スレイマン1世
スレイマン1世:オスマン帝国の第10代皇帝
1494年11月6日~1566年9月6日
数々の軍事的成功を治め、オスマン帝国の最盛期を作った人物として知られています。
その功績から「壮麗帝(そうれいてい)」や「スレイマン大帝」と呼ばれています。
トルコ国内では法典を編纂し帝国の制度を整備したことから「立法帝」ともあだ名されるそうです。
第一次ウィーン包囲や黒海支配など華々しい戦果で知られます。
同時に後継者争いなどの暗い側面も持っています。
オスマン帝国の最盛期を作った人物として知られる理由は、戦果だけではなくオスマン帝国の文化的な成熟を迎えたことにあります。
都市の発展、商業の発展、芸術の発展などを迎えます。
スレイマン1世自身も数多くの公共施設の寄進を行っており、文化の発展を後押ししました。
まさしくオスマン帝国の最盛期と言えます。
しかし、後の時代においては「スレイマン1世の時代に立ち返ろう!」というスローガンの元で国家は保守的になり衰退をしていくことになります。
http://ja.wikipedia.org/wiki/スレイマン1世
まとめ
無駄にカッコイイ二つ名・異名【オスマントルコ編】いかがだったでしょうか?
かつて大帝国だったオスマン帝国は調べていて本当に面白いです。
コンスタンティノープルの陥落を描いた塩野七生さんの「コンスタンティノープルの陥落」は非常にオススメです。歴史の解説書ではなく「小説」なので非常に読みやすいです。
五回目となる二つ名・異名ですが、「中国史」にまったく触れていないことに気が付きました…近日中に中国編を書きたいと思います。
それでは、次回にご期待ください。