異名に「天使や悪魔」が付けられた人物たち
今回の異名シリーズのテーマは「天使と悪魔」。
天使・悪魔の異名を持つ人物たちをご紹介していきます。
目次
天使編
クリミアの天使:フローレンス・ナイチンゲール
フローレンス・ナイチンゲール
1820年5月12日~1910年8月13日
1854年のクリミア戦争における活動によって世界的に有名になった人物。
病院の夜回りを欠かさなかったことから「ランプの貴婦人」とも呼ばれています。
医療現場に「統計学」を持ち込んだ人物としても知られており、統計に基づく医療衛生改革は後の医療現場に多大な影響を与えました。
異名の由来はその献身的な活動から。
ただし、本人はあまりこの異名を好きではなかったようです。
「天使とは、美しい花をまき散らす者でなく、苦悩する者のために戦う者である」と発言しており世間のイメージと自身の信念に対してギャップを感じていたと思われます。
現在、女性看護師のことを「白衣の天使」と表現する場合がありますがそれはナイチンゲールに由来しているそうです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/フローレンス・ナイチンゲール
死の天使長:ルイ・アントワーヌ・ド・サン=ジュスト
ルイ・アントワーヌ・レオン・ド・サン=ジュスト
1767年8月25日~1794年7月28日
フランス革命時に活動した革命家・政治家でロベスピエールの右腕として有名。
ルイ16世の処刑を決定づけたと言われる「処女演説」を行った人物としても有名です。
女性と見間違えるほどの美貌と冷厳な革命活動から「死の天使長」と呼ばれています。
また、革命の大天使とも呼ばれたそうです。
何となく日本人的な感覚では「天使=可愛らしい」というイメージです。
しかし欧米における天使、特に「天使長」はミカエルを指す言葉で、ミカエルは可愛らしい天使ではなく、数々の武勇で知られ最後の審判では裁きを行う天使です。
そのため、わざわざ「天使長」と呼んだのは、彼のもっていた「冷厳さ」を際だたせるためだと思われます。
最期は1794年7月27日にテルミドールのクーデターで逮捕、共に活動を行ったロベスピエールと共に処刑をされています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ルイ・アントワーヌ・ド・サン=ジュスト
天使的博士:トマス・アクィナス
トマス・アクィナス
1225年頃~1274年3月7日
カトリック教会と聖公会では聖人として認定され、信仰理解において偉大な業績を残した人に送られる教会博士の中のひとり。
神学大全の著作で知られスコラ学の代表的神学者のひとりです。
彼の業績や人徳は非常に高く評価され、キリスト教発展の基礎を作ったパウロや西洋思想全体に影響を与えたとされるアウグスティヌスに並び立つ人物と言われています。
その偉大さから「天使的博士(Doctor Angelicus)」と呼ばれています。
非常に親しみやすい人柄だったようで、議論においては常に冷静で論争者が惚れ込んでしまうほど魅力的な人物だったようです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/トマス・アクィナス
悪魔編
黒い悪魔:エーリヒ・ハルトマン
画像引用元:Wikipediaより
エーリヒ・ハルトマン
1922年4月19日~1993年9月20日
数々の怪物的エースパイロットを生み出した第二次世界大戦中のドイツにおいて、怪物の中の怪物と呼ぶに相応しいエースパイロット。
総出撃回数1405回、うち825回の戦闘機会において最終撃墜数352機、被撃墜16回。
空中戦での撃墜機数は戦史上最多という怪物です。
独ソ戦において猛威を振るい、ソ連空軍から「黒い悪魔」と呼ばれました。
異名の由来は乗機メッサーシュミットBf109Gの機首に黒いチューリップ風のマーキングをしていたためです。
ソ連側に「黒い悪魔」が知れ渡り黒いチューリップ風のマーキングを見ると敵が撤退してしまうため、迎撃数を上げるためにマーキングを消したそうです。
空中戦において高い迎撃数を記録出来たのは「観察―決定―攻撃―離脱または小休止【コーヒー・ブレーク】」という、独自の4段階戦闘法を確立したためだと言われています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/エーリヒ・ハルトマン
悪魔公:ヴラド・ツェペシュ
ワラキア公ヴラド3世
1431年11月10日~1476年12月19日
15世紀のワラキア公国の君主で中央集権化を行い、オスマン帝国と対抗しました。
ブラム・ストーカーの小説「吸血鬼ドラキュラ」の吸血鬼・ドラキュラ伯爵のモデルの一人。
「串刺し公」の異名でも知られスマン帝国軍のみならず自国の貴族や民も数多く串刺しにして処刑したと伝えられています。
本来は「竜公」というものだったのが、キリスト教における「竜・蛇=悪魔」というイメージから後に悪魔公と呼ばれるようになったそうです。
また、ハンガリーが行ったプロパガンダによってマイナスイメージが広く流布され、「悪魔」のイメージが広く浸透したと言われています。
「ヴラドは人を無差別に殺し血肉を食らって晩餐を開いた」などが当時の最先端の技術である印刷を使って広く配布されたそうです。
現在では「ルーマニア独立のために戦った英雄」としての再評価が行われており、伝えられている数多くの残酷な逸話もプロパガンダだったのではないかと言われています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ヴラド・ツェペシュ
僧衣を着たメフィストフェレス:フランツ・リスト
フランツ・リスト
1811年10月22日~1886年7月31日
優れたピアニストだったためピアノ曲を中心に作曲活動を行った人物で、その高い技巧によって「ピアノの魔術師」とも呼ばれたそうです。
その美しい容姿から数多くの熱狂的な女性ファンがいたそうです。
数々のロマンスでも知られた典型的な「モテる男」だったようです。
- 捨てた煙草や投げた手袋をファンが奪い合う
- 演奏を聞いたファンの女性が失神
- 泊まったホテルのバスタブの残り湯をファンが飲むなど
現代で言うアイドル的な人気があったようです。
異名の「僧衣を着たメフィストフェレス」は女性を虜にしてしまうその容姿故です。
メフィストフェレスはゲーテの「ファウスト」にも登場する有名な悪魔のことです。
1865年に僧籍に入っているおり、その僧服姿からこの異名で呼ばれたとされています。
たくさんの弟子が居たことで有名で、その理由は無料で指導を行ったため。
芸術家が演奏以外で巨額の収入を得ることを好まなかったそうです。
興味深いエピソードとしては、リストの弟子を騙った人物に向けた言葉です。
男はリストに謝罪をすると、リストは演奏をすすめ、聞き終わると「さあ、これであなたは、リストの弟子だと胸をはって言っていいですよ」と励ましたそうです。
これがイケメンか…
http://ja.wikipedia.org/wiki/フランツ・リスト
まとめ
「天使や悪魔」が付けられた人物たちいかがだったでしょうか?
天使や悪魔の付く言葉は西洋圏では一般的で、今回はおまけとして「天気の梯子」をご紹介。
http://ja.wikipedia.org/wiki/薄明光線
薄明光線と呼ばれる自然現象で、太陽が雲に隠れているとき、雲の切れ間あるいは端から光が漏れ光の柱が放射状に地上に降り注ぐ現象を指しています。
別名では「天使の階段」「ヤコブの梯子」と呼ばれ旧約聖書創世記28章12節に由来しているそうです。
言葉には強く文化が反映されるので、西洋圏の言葉のルーツを調べてみるのも非常に面白いかもしれません。